目次

メトホルミンは、2型糖尿病治療薬として世界的に広く使用されてきたビグアナイド系経口薬で、血糖コントロールや体重増加抑制など多面的な作用を持つことが特徴です。
近年では、体重減少効果が注目され、美容・健康目的での適応外使用としてメディカルダイエットにも利用されるケースがあります。
本記事では、メトホルミンの作用メカニズム、安全な服用方法、副作用の注意点を詳しく解説します。

メトホルミンとは?その多面的な作用と服用目的

メトホルミンは、60年以上の歴史を持つビグアナイド系経口血糖降下薬の代表格です。
世界で最も広く使用されている糖尿病治療薬の一つであり、その安全性と効果は長年にわたって証明されています。

2型糖尿病治療におけるメトホルミンの位置づけ

メトホルミンは、日本糖尿病学会や米国糖尿病学会(ADA)などの主要な診療ガイドラインにおいて、2型糖尿病治療の第一選択薬として長年推奨されてきました。
この推奨理由は、強力な血糖降下作用に加え、単独使用では低血糖を起こしにくく、体重増加を来しにくい、心血管イベント抑制効果のエビデンスがある、薬価が安価である、といった多くの利点を持つためです。
UKPDSでは、メトホルミンが他の薬剤と比較して、肥満2型糖尿病患者の糖尿病関連合併症や心筋梗塞のリスクを有意に低下させたことが示されています。
このような大規模臨床試験の結果により、メトホルミンは糖尿病治療において確固たる地位を築いています。
近年のガイドラインでは、心不全や動脈硬化性心血管疾患を合併する患者に対しては、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬が優先されるケースも出てきていますが、メトホルミンは依然として薬物療法の基本となる重要な薬剤と位置づけられています。

血糖コントロールとインスリン抵抗性改善のメカニズム

メトホルミンの作用機序は多面的で複雑です。
主作用は肝臓での糖新生を抑制することです。 肝臓が血液中にブドウ糖を放出するのを抑えることで、血糖値の上昇を防ぎます。
さらに、末梢組織での糖利用を促進させます。
筋肉や脂肪組織がインスリンの指令に反応しやすくなり(インスリン感受性改善)、血液中のブドウ糖を効率よく取り込むようになります。
小腸での糖吸収を抑制する作用もあります。
食事から摂取した糖の吸収を穏やかにし、食後血糖値の急激な上昇を防ぎます。
これらの作用の根底にあるのが、AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)の活性化です。
AMPKは細胞内のエネルギーセンサーであり、活性化すると脂肪酸の合成が抑制され、酸化(燃焼)が促進されます。
この「運動擬似効果」により、メトホルミンは糖代謝だけでなく脂質代謝の改善にも寄与します。

医療ダイエット(肥満治療)への応用と国内での承認状況

日本では、メトホルミンは「2型糖尿病」および「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)における排卵誘発・調節卵巣刺激」の効能・効果で承認されています。
ダイエット目的での使用は、体重減少効果が報告されていることから、美容クリニックなどで医療ダイエット(肥満治療)目的に処方されることがありますが、この使用法は国内では承認されていない「適応外使用」にあたります。
適応外使用のため、健康保険は適用されず、費用は全額自己負担の自由診療となります。
さらに重要なのは、適応外使用で重篤な健康被害が生じた場合、公的な救済制度である「医薬品副作用被害救済制度」の給付対象とならない可能性があることです。
このリスクを理解した上で、医師の厳格な管理下でのみ使用を検討する必要があります。
自己判断での個人輸入は極めて危険です。
品質や安全性が保証されない偽造薬のリスクがあり、重篤な健康被害につながるため絶対に行うべきではありません。

なぜメトホルミンは「1日2回」の服用が多いのか?

メトホルミンが1日2回服用される理由には、薬理学的、臨床的な明確な根拠があります。
単純に「そう決められているから」ではなく、患者さんの安全性と治療効果を最大化するための科学的な背景が存在します。

薬効の持続と安定した血糖値コントロールのため

一般的に使用される速放性製剤(普通錠)は、服用後、血中濃度が速やかにピークに達し、その後比較的速く体外へ排泄されます。
この血中濃度の半減期(薬の量が半分になるまでの時間)は約3.6時間と短いのが特徴です。
半減期が短いため、1日1回の服用では薬の効果が持続せず、血糖値がコントロールできない時間帯が生まれてしまいます。
特に、夕食後から翌朝にかけて効果が切れると、夜間や早朝の血糖値が上昇しやすくなります。
1日の服用量を2回(または3回)に分割することで、薬の血中濃度を一定の治療域に保つことができます。
これにより、24時間にわたって安定した血糖コントロール(特に肝臓での糖新生抑制効果)を維持し、1日を通じた血糖値の乱高下を防ぐことが可能になります。
薬物動態の観点から見ると、1日1回1000mgを服用するよりも、朝500mg・夕500mgと分けて服用する方が、血中濃度の最低値(トラフ値)を高く保ち、最高値(ピーク値)を低く抑えることができます。
これにより、効果は安定し、副作用リスクは低減されます。

消化器症状などの副作用を軽減するため

メトホルミンの最も一般的な副作用は、下痢、悪心(吐き気)、腹痛、食欲不振などの消化器症状です。
特に下痢は服用者の約40%に見られるとの報告があります。
これらの症状は、一度に高用量を服用した場合や、服用開始初期、増量時に現れやすく、用量依存的な副作用として知られています。
1日の総量を分割して1回あたりの服用量を少なくすることで、消化管への刺激を和らげ、血中濃度の急激な上昇を避けることができます。
これにより、消化器症状の発現を抑制し、患者の忍容性(薬の続けやすさ)を高めることが可能になります。
この考えに基づき、実際の処方では1日500mg程度の少量から開始し、体の慣れ具合を見ながら数週間かけて徐々に維持量(例:1000mg〜1500mg)まで増やしていく「漸増投与」が基本となっています。
消化器症状(特に下痢・嘔吐)が続くと脱水状態になり、重篤な副作用である乳酸アシドーシスのリスクを高める可能性があるため、症状が強い場合は我慢せずに医師に相談することが重要です。

服薬アドヒアランス(飲み忘れ防止)の向上

薬の服用を「朝食後」「夕食後」といった毎日の決まった生活習慣(食事)と関連付けることで、飲み忘れを効果的に防ぐことができます。
これは薬理学的な必須要件というよりは、長期にわたる治療を確実に継続するための、臨床現場における実践的な工夫です。
服薬アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)の維持は、治療効果を左右する重要な要素となります。
特に糖尿病やダイエット目的での長期治療においては、患者さんが無理なく続けられる服薬パターンを確立することが、治療成功の鍵を握っています。

メトホルミンの正しい飲み方と服用タイミングのポイント

メトホルミンの効果を最大化し、副作用を最小限に抑えるためには、正しい服用方法を理解することが重要です。
単に「薬を飲む」だけでなく、タイミングや方法にも科学的な根拠があります。

食直前または食後の服用が推奨される理由

メトホルミンは食直前または食後の服用が強く推奨されています。
主目的は副作用の軽減です。
空腹時に服用すると胃腸への直接的な刺激が強くなり、吐き気や下痢などの消化器症状が出やすくなります。
食事と一緒に摂ることで、これらの副作用を大幅に軽減できます。
副目的として、食後高血糖の抑制があります。
食事によって上昇する血糖値に合わせて薬を作用させることで、食後の急激な血糖値スパイクを効果的に抑えることができます。
医薬品の添付文書にも「1日2~3回に分割して食直前又は食後に経口投与する」と明記されています。
「食直前」とは食事の5分以内、「食後」とは食事終了後30分以内が目安とされており、タイミングを一定に保つことが安定した効果につながります。

速放製剤と徐放製剤による服用方法の違い

メトホルミンには、速放性製剤(IR: Immediate Release)と徐放性製剤(XR: Extended Release)の2つのタイプがあります。
速放性製剤の商品名例には「メトグルコ錠」「グリコラン錠」などがあります。
特徴として、服用後、有効成分が速やかに放出されるため、血中半減期が短く、1日2~3回の分割投与が必要になります。
一方、徐放性製剤の商品名例には「メトグルコXR錠」「メトホルミン塩酸塩徐放錠」などがあります。
特殊な製剤技術により、有効成分が1日かけてゆっくりと放出されるため、血中濃度が緩やかに上昇し、長時間安定して持続するため、1日1回の服用で済みます。
徐放性製剤のメリットは、服薬回数が減るため飲み忘れが少なくなり、アドヒアランスが向上することです。
また、血中濃度の急激なピークを避けられるため、速放性製剤に比べて下痢などの消化器症状が少ない傾向があります。
1日2回の服用が負担に感じる場合や、消化器系の副作用が強い場合は、医師に相談して徐放性製剤(XR)への変更を検討することも一つの選択肢となります。

食事をしない場合や飲み忘れた際の注意点

食事をしない場合(欠食)では、メトホルミン単独では低血糖のリスクは低いですが、食事を摂らない場合は薬の主な目的である食後高血糖の抑制が必要ないため、その回の服用はスキップ(飲まない)するのが一般的です。
ただし、自己判断せず、必ず事前に医師や薬剤師に確認することが重要です。
飲み忘れた場合の基本ルールは、決して2回分を一度に飲んではいけないということです。
過量投与となり、副作用のリスクが高まります。
対処法としては、飲み忘れに気づいた時間が、次の服用時間から離れている場合は、気づいた時点ですぐに1回分を服用します。
次の服用時間が近い場合は、忘れた分はとばして、次の時間に1回分だけを服用します。

1日あたりの最大服用量と1回量の目安

承認されている用法・用量(2型糖尿病)では、成人は通常、1日500mgから開始し、維持量は1日750~1,500mgとされています。
患者の状態により適宜増減しますが、1日最大投与量は2,250mgまでとなっています。
小児(10歳以上)では、通常、1日500mgから開始し、維持量は1日500~1,500mg、1日最大投与量は2,000mgまでとされています。
中等度の腎機能障害患者では、腎機能(eGFR値)に応じて減量が必要です。
日本糖尿病学会の推奨では、eGFRが45以上60未満で1,500mg/日、30以上45未満で750mg/日が目安とされています。
ダイエット目的(適応外使用)での目安は、クリニックによって方針は異なりますが、一般的に1日500mgから開始し、副作用の有無を確認しながら1,000mg~1,500mg程度まで増量することが多いです。
最大量を超えて服用しても効果の増強は期待できず、副作用のリスクが著しく高まるだけです。
必ず医師の指示した用量を厳守することが重要です。

メトホルミン服用で注意すべき副作用と危険なケース

メトホルミンは比較的安全な薬剤ですが、副作用のリスクを正しく理解し、適切に対処することが安全な治療には不可欠です。
軽微なものから重篤なものまで、幅広い副作用について詳しく解説します。

初期に見られる一般的な消化器症状とその対処法

国内の臨床試験では、下痢(40.5%)、悪心(15.4%)、食欲不振(11.8%)、腹痛(11.5%)、嘔吐などが主な症状として報告されています。
これらの症状は服用開始時や用量を増やした時に起こりやすく、発現時期は治療初期に集中しています。
対処法として、まず少量から開始して体が薬に慣れる時間を作ることが重要です。
食直後・食後に服用することで胃腸への刺激を和らげることができます。
多くの場合、服用を続けるうちに症状は軽快・消失します。
症状が辛い、または長期間続く場合は、我慢せずに処方医に相談してください。
減量や徐放性製剤への変更などを検討するため、適切な医療アドバイスを受けることが大切です。

最も注意すべき重篤な副作用「乳酸アシドーシス」の兆候とリスク要因

乳酸アシドーシスは、血液中に乳酸が過剰に蓄積し、血液が酸性に傾く状態です。
頻度は極めて稀(年間発生率は10万人に数人程度)ですが、発症した場合の死亡率は約50%と非常に高く、緊急治療を要する最も危険な副作用です。
初期症状は悪心、嘔吐、下痢、腹痛などの胃腸症状、倦怠感、筋肉痛、過呼吸などで、非特異的で風邪の症状と似ているため見過ごされやすいのが特徴です。
しかし、これらの症状が現れた場合は直ちに服用を中止し、医療機関を受診する必要があります。
主なリスク要因として、腎機能障害が最大の危険因子です。
メトホルミンは腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると薬が体内に蓄積し、リスクが急増します。
また、脱水は、シックデイ(発熱、下痢、嘔吐、食事がとれない時)や、利尿薬の併用などで起こりやすくなります。
過度のアルコール摂取も、肝臓での乳酸代謝を阻害するため危険です。
また、ヨード造影剤の使用では、一時的に腎機能が悪化する可能性があるため、検査前後の休薬が必須です。
高齢者(特に75歳以上)、重度の肝機能障害、心不全や呼吸不全など低酸素血症を伴う状態では特に注意が必要です。

長期服用に伴うビタミンB12欠乏のリスク

メトホルミンの長期服用(数年以上)により、腸管からのビタミンB12の吸収が阻害され、体内のビタミンB12が欠乏することがあります。
正確な機序は完全には解明されていませんが、腸のカルシウム依存性のプロセスに影響を与えるためと考えられています。
欠乏すると、赤血球が正常に作れなくなり貧血(大球性貧血)になったり、神経の鞘(ミエリン)が傷ついて手足のしびれや痛み(末梢神経障害)を引き起こしたりすることがあります。
これらの症状はゆっくり進行するため気づきにくいのが特徴です。
対策として、長期服用者は定期的な血液検査でビタミンB12濃度や貧血の有無をチェックすることが推奨されます。
欠乏が認められた場合は、サプリメントによる経口補充や注射による補充が行われます。

服用が禁止となる身体的条件・疾患

添付文書で服用が禁止とされる主なケースでは、乳酸アシドーシスのリスクが極めて高い、またはインスリン治療が必須の状態が該当します。
具体的には、乳酸アシドーシスの既往がある患者、重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m2未満)または透析患者、重度の肝機能障害のある患者、心不全、心筋梗塞、肺塞栓など、低酸素血症を伴いやすい状態の患者です。
さらに、脱水症の患者、または下痢・嘔吐などで脱水が懸念される患者、過度のアルコール摂取者、1型糖尿病、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡の患者、重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者、妊婦または妊娠している可能性のある女性も服用禁止とされています。

併用注意の薬剤と飲み合わせのリスク

併用が禁止されているものとして、アルコール(過度の摂取)は乳酸アシドーシスのリスクを著しく高めるため注意が必要です。
一方、併用に注意が必要となるものは、乳酸アシドーシスのリスクを高める薬剤として、ヨード造影剤、腎毒性の強い抗生物質(ゲンタマイシン等)があります。
これらは腎機能を低下させ、メトホルミンの排泄を遅らせます。
血糖降下作用を増強する薬剤(低血糖のリスク)には、他の糖尿病用薬(インスリン、SU薬など)、β遮断薬、サリチル酸剤(アスピリン)などがあります。
血糖降下作用を減弱する薬剤(高血糖のリスク)には、副腎皮質ホルモン(ステロイド)、甲状腺ホルモン、利尿薬、SGLT2阻害薬(脱水を引き起こす可能性がある)などがあります。
メトホルミンの血中濃度を上昇させる薬剤として、シメチジンなど一部の胃薬(H2ブロッカー)や抗ウイルス薬(ドルテグラビル等)は、腎臓でのメトホルミンの排泄を担うトランスポーター(OCT2, MATE1)を阻害するため注意が必要です。

メトホルミンダイエットで期待できる効果とおすすめな方

メトホルミンがダイエット目的で注目される理由は、その多面的な代謝改善作用にあります。
ただし、効果や適応について正しく理解することが重要です。

食欲抑制と満腹感の持続メカニズム

メトホルミンは、小腸から分泌される消化管ホルモン「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」の分泌を増やす作用があります。
GLP-1は「やせホルモン」とも呼ばれ、脳の満腹中枢に働きかけて食欲を抑制し、胃の動きを緩やかにして食べ物の消化・吸収を遅らせることで、少ない食事量でも満足感を得やすくし、満腹感を持続させる効果があります。
この結果、自然な形で食事量が減り、間食が少なくなることで、摂取カロリーの抑制につながります。
人工的な食欲抑制とは異なり、生理的なメカニズムを利用した穏やかな効果が特徴です。

脂肪蓄積抑制と代謝促進への影響

血糖値の急上昇を抑えることで、脂肪蓄積を促すホルモンであるインスリンの過剰な分泌を防ぎます。
これにより、糖が脂肪として体に蓄積されにくくなります。
肝臓における脂肪酸の合成を抑制し、中性脂肪の蓄積を防ぐ作用もあります。
吸収されなかった余分な糖を便として体外に排出する作用も報告されており、カロリー吸収を抑制する一因となります。
細胞のエネルギーセンサーAMPKを活性化することで、運動時と同様に脂肪酸の燃焼を促進するシグナルが働く「運動擬似効果」も期待されています。

効果を実感するまでの期間と持続時間の目安

効果発現のタイムラインは個人差が非常に大きいですが、体重減少効果が統計的に有意に現れるまでには数ヶ月単位の時間が必要です。
ある研究では、服用開始から3〜6ヶ月で体重とBMIの減少が見られたと報告されています。
日本人を対象とした試験では、26週(約6ヶ月)後から有意な体重減少がみられ、54週後で平均約1kgの減量効果が認められました。
大規模研究では、メトホルミン群は1年で平均2.1kg、10年後も平均2.5kgの体重減少を維持しており、長期的な体重維持に貢献する可能性が示されています。
短期間で劇的な体重減少をもたらす薬ではないため、数週間で効果が見られないからといって自己判断で中断せず、長期的な視点で取り組む必要があります。

特に効果が期待できる方の特徴

インスリン抵抗性が高い方、特に内臓脂肪が多い方、食後の血糖値が上がりやすい方は、インスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」の状態にあることが多いです。
メトホルミンはインスリン感受性を改善する作用が中心のため、このような体質の方で特に高い効果が期待できます。
炭水化物・糖質の摂取が多い食生活の方では、ご飯、パン、麺類、甘いものが好きな方は、血糖値が乱高下しやすく、インスリンの過剰分泌により脂肪が蓄積しやすい傾向があります。
メトホルミンは糖の吸収と利用を改善するため、このような食生活の方のダイエットをサポートします。
食欲のコントロールが苦手な方では、GLP-1分泌促進作用により、自然な食欲抑制効果が期待できるため、食べ過ぎてしまう傾向のある方に適しています。

メトホルミン単独での過度なダイエット効果期待は禁物

メトホルミンは、飲むだけで魔法のように痩せる薬ではありません。
その効果は比較的マイルドであり、食事療法と運動療法を基本とした上での補助的な役割を担います。
カロリー収支の原則は変わりません。
メトホルミンを服用していても、摂取カロリーが消費カロリーを大幅に上回っていれば体重は減りません。
薬を飲んでいるからと安心して過食することは、効果を打ち消す最大の要因となります。
期待値の適正化が重要です。
過度な期待はせず、「健康的に、緩やかに体重を落とし、リバウンドしにくい体質を作るためのサポート」と位置づけることが、治療を成功させる上で重要です。

メトホルミンの効果を最大限に引き出す生活習慣のポイント

メトホルミンの効果は、適切な生活習慣と組み合わせることで大幅に向上します。
薬だけに頼るのではなく、科学的根拠に基づいた生活習慣の改善が治療成功の鍵となります。

食事療法:糖質・タンパク質のバランスと食物繊維の重要性

糖質の管理では、極端な糖質制限は不要ですが、血糖値を急上昇させる精製された糖質(白米、白いパン、菓子類、ジュース)は控え、玄米や全粒粉パン、オートミールなど低GI値の複合炭水化物を選ぶことが推奨されます。
タンパク質の確保は筋肉量の維持・増加のために重要です。
赤身肉、鶏胸肉、魚、大豆製品、卵などから良質なタンパク質を毎食摂取することが大切です。
筋肉は体内で最も多くの糖を消費する組織であり、筋肉量の維持は基礎代謝を高め、リバウンド防止につながります。
食物繊維の積極的な摂取も重要なポイントです。
野菜、きのこ、海藻類に豊富な食物繊維は、糖の吸収を穏やかにし、食後血糖値の上昇を抑制します。
また、腸内環境を改善し、満腹感を持続させる効果もあります。
これらの栄養バランスを意識することで、メトホルミンの血糖改善作用を最大限に活用できます。

運動療法:血糖コントロールを高める筋トレと有酸素運動の組み合わせ

食事療法と運動療法は糖尿病治療の基本であり、メトホルミン服用の有無にかかわらず必須です。
運動との併用は、メトホルミンの効果を相乗的に高めます。
有酸素運動として、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが推奨されます。
脂肪を直接的なエネルギー源として燃焼させ、心肺機能を高める効果があります。
週に150分以上が目標とされています。
レジスタンス運動(筋トレ)では、スクワット、腕立て伏せ、ダンベル体操などが効果的です。
筋肉量を増やし、基礎代謝を向上させます。
筋肉は糖の最大の貯蔵庫であり、筋トレはインスリン感受性を直接的に改善する作用があります。
最適な組み合わせは、筋トレで筋肉を刺激し、糖を取り込みやすい状態にした後、有酸素運動で脂肪を燃焼させるという順番が最も効率的とされています。

質の高い睡眠とストレス管理の重要性

睡眠不足は、食欲を増進させるホルモン(グレリン)を増やし、食欲を抑制するホルモン(レプチン)を減らします。
また、ストレスホルモン(コルチゾール)を増加させ、インスリン抵抗性を悪化させるため、血糖コントロールに悪影響を及ぼします。
精神的なストレスもまた、コルチゾールなどのホルモン分泌を通じて血糖値を上昇させる要因となります。
対策として、十分な睡眠時間(7~8時間推奨)を確保し、質の高い睡眠を心がけることが重要です。
また、趣味やリラクゼーションの時間を持つなど、効果的なストレス管理を行うことが、メトホルミンの効果を安定させる上で間接的に重要となります。
これらの生活習慣の改善は、メトホルミンの薬理作用と相乗効果を生み、より安定した治療効果をもたらします。

安全で効果的なメトホルミン治療のために医療機関との連携を

メトホルミンは処方薬であり、安全で効果的な治療のためには医療専門家との密な連携が不可欠です。
自己判断による治療は重大なリスクを伴います。

医師の指示厳守と自己判断の危険性

メトホルミンはサプリメントではなく、医師の診断と処方が必要な医療用医薬品です。
この認識を持つことが安全な治療の第一歩となります。
用法・用量の厳守は絶対に必要です。
効果が出ないからといって自己判断で増量したり、副作用が怖いからと勝手に中断したりすることは、効果が得られないだけでなく、重篤な副作用のリスクを高める行為であり極めて危険です。
個人輸入は絶対に禁止です。
インターネット等で安易に海外から購入する行為は、偽造薬や粗悪品を入手するリスクが非常に高く、予期せぬ健康被害につながる可能性があるため、絶対に行ってはなりません。
医師は患者さん一人ひとりの体質、既往歴、現在服用中の薬剤、検査値などを総合的に判断して処方を決定しています。
この医学的判断を無視した自己流の服用は、治療効果を損なうだけでなく、生命に関わる危険を招く可能性があります。

定期的な検査と体調変化の報告の重要性

安全性を確認し、効果を客観的に評価するために、定期的な受診と血液検査が不可欠です。
特に、乳酸アシドーシスのリスクを評価するための腎機能(eGFR)、肝機能のチェックは必須項目です。
長期服用者では、ビタミンB12の値も定期的に確認することが望ましいとされています。
これらの検査により、副作用の早期発見と適切な対処が可能になります。
体調変化の速やかな報告も重要です。
乳酸アシドーシスの初期症状(原因不明の倦怠感、筋肉痛、胃腸症状など)や、その他の気になる体調変化があった場合は、些細なことでも速やかに医師や薬剤師に報告することが、重篤な事態を防ぐために最も重要です。
特に以下のような症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。

  • 原因不明の強い倦怠感や脱力感
  • 持続する吐き気や嘔吐
  • 激しい下痢や腹痛
  • 筋肉痛や関節痛
  • 呼吸が荒くなる
  • 意識がぼんやりする

これらは乳酸アシドーシスの可能性を示唆する症状であり、緊急性が高い状態です。
また、効果に関する報告も大切です。
「思ったより効果が出ない」「副作用が辛い」といった情報は、医師が治療方針を調整する上で貴重な判断材料となります。
遠慮せずに率直に伝えることで、より良い治療を受けることができます。

まとめ

メトホルミンは、肝臓での糖新生抑制や筋肉での糖利用促進、小腸での糖吸収抑制など、多面的な作用で血糖値を安定させ、体重増加を防ぐ効果が期待できる薬です。
食欲を抑制するGLP-1分泌促進作用や脂肪燃焼を促すAMPK活性化作用もあり、ダイエット目的での使用例も増えています。
ただし、国内での減量目的使用は適応外であり、必ず医師の管理下で行う必要があります。
副作用として消化器症状やまれに乳酸アシドーシスがあるため、服用開始は少量から行い、定期的な検査と体調報告が欠かせません。
服用の基本は食後または食直前で、速放性製剤は1日2~3回、徐放性製剤は1日1回が目安です。
飲み忘れや欠食時の対応も事前に確認し、自己判断で増減や中止を行わないことが安全性確保につながります。
ビタミンB12欠乏の可能性もあるため、長期服用では定期検査が推奨されます。
近江今津駅前メンタルクリニックでは、日本肥満症治療学会員の院長によるオンライン診療を通じて、全国どこからでも各種メディカルダイエット薬の処方が可能です。
診察料無料、薬代のみの明確な料金設定、全国送料無料で、夜間診療にも対応しています。
体質や生活習慣に合わせた薬の選択と継続フォローにより、無理なく安全に減量を目指せます。
健康的な体づくりを始めたい方は、まずはメディカルダイエットの無料カウンセリングを予約し、専門医のアドバイスを受けることをおすすめします。

お問合せについて